homehome
beishubanbeishuban
customercustomer
newsclipnewsclip
weeklyweekly
日本経済新聞米州版ガイド
新規購読お申込
日経おすすめコンテンツ
日経が読めるホテル・エアライン・売店
今月の日経
2008年新聞休刊日
米州版 よくある質問
購続継続の手続き
購続一時止めの手続き
住所変更の手続き
インターネットでの問い合わせ
ニュースクリッピング活用ナビ
ステップ 1-2-3
ニュースクリッピング利用ガイド
ニュースクリッピング よくある質問
新規登録 アメリカ・カナダ用
新規登録 中南米用
The Nikkei Weekly ガイド
新規購読申込
無料サンプルキャンペーンのご案内
米州版への折込チラシ
日本経済新聞米州版
The Nikkei Weekly
お気軽にご連絡下さい。
日経カスタマーサービス
トールフリー:
1(800)322-1657
電話番号:
1(718)433-1400
Email:
info@nikkei.com
linklink
美術館巡りを中心に旅行を組み立てる人は少数派としても、出張先で空き時間があったら美術館に足を伸ばす人はけっこう多いのではないだろうか。米国には欧米の巨匠と呼ばれる画家たちの名画や、美術史上で重要な絵画が多数集まっている。今回はその中で、専門家がすすめる作品を紹介する。
伝統的手法に決別した革命的作品
ピカソの「アヴィニョンの娘たち」はキュビスムの出発点として20世紀美術の扉を開いた絵画で日本人にとっては近・現代絵画の「モナリザ」のような存在と言える。「対象を観察し、分析、総合するという現代人の姿勢を絵画で実現した作品。20世紀絵画の方向を決めた作品で、米国にある絵画の中で最も重要」(清水氏)。逸話や物語を意図した伝統的な表現とは決別した革命的といえる作品だが、当初はこの絵の重要性に誰も気付かなかったという。
国宝級の扱い受けるポロック作品
ポロックは「現代美術の父」と呼ばれ、「抽象表現主義」の旗手として知られている。西洋絵画と違い、現代抽象絵画は見る者の記憶の中にある既存の絵のイメージと比較するのでなく、対象から何かを感じ取るものであると言われる。「床に敷いたキャンバスの上を駆け回って絵の具を振りかけていくアクション・ペインティングと揶揄(やゆ)された制作手法を編み出したが、これはその代表作」(金沢氏)。「ペンキをしたたらせながら、キャンバスに付けずに描くドリップという手法によって力強く表現されており、観る者を最高潮に達した瞬間に誘う」(中里氏)。しかし、ただ塗りたくったものではなく、縦2.7メートル、横5.3メートルの巨大なカンヴァスに丁寧に描かれたものであり、その迫力を肌で感じ取ってもらいたい。
彼は56年8月11日ニューヨーク州ロング・アイランド、イースト・ハンプトンの自宅付近路上で車事故により死亡。生涯は後に映画化され、彼の死はチャーリー・パー カー、ジェームス・ディーンと並んでアメリカ三大悲劇とも言われている。
親しみある点描画の代表作
スーラは正確には新印象主義の創始者と位置付けられる。印象派・後期印象派の作品は本国であるフランスに最も多く所蔵されているのは当然だが、日米にも数多く重要な作品がある。31歳の若さで亡くなったため、数少ない作品の中で、2年の歳月をかけて描かれたこの『グランドジャット島の日曜日の午後』は名作で、どこかで目にしたことがあるだろう。「スーラを始め点描派は美術史上、大きな流派ではない。しかし縦2メートル、横3メートルを超えるこの作品に美術書やテキストの図版などで親しんできた人は多いはず。ミュージカルのテーマにもなり、米国人にも親しまれている」(佐々木氏)。
リズム感があり楽しくなる抽象作品
モンドリアンの『ブロードウェイ・ブギウギ』は日本人が抽象絵画の代表作として真っ先に思い浮かべる作品。「水平線と垂直線との交錯、点滅する色彩のリズムが軽快で、日本人好みと言える」(宝玉氏)「パリに代わってニューヨークが戦後のアートの中心になった理由の一つは、ナチの迫害を逃れて多くのアーティストが米国に避難し、米国の芸術家たちに影響を与えたから。モンドリアンはニューヨークを愛し、戦後もパリには戻らなかった。この絵には米国に受け入れられた彼の喜びが表れていて、ストイックな彼の作風の中で最も楽しい絵だ」(長沢氏)。
国民的人気の画家、米国の孤独感を活写
今年初め、日経日曜版の「美の美」でも3週連続で取り上げたエドワード・ホッパーは米国で最も愛されている画家の一人。代表作「ナイトホークス」からは都会に住む人々の孤独感が伝わってくる。明々と照らされたダイナーに所在なげにたたずむ三人の男女。映画のシーンに登場しそうなこの作品は物語の存在を感じさせる彼独特の表現といえる。「ホッパーは大都市の無機質性と希薄な人間性をテーマとして多くの名作を残した。彼の別荘があったコッド岬の一連の風景画からも米国の孤独を強く感じる」(金沢氏)
アメリカ最後の古典
日本では米国絵画の人気はそれ程高くはないが、その中でもワイエスは最もよく知られ、かつ愛されている巨匠の一人。ワイエスに関する出版物で必ず取り上げられるのがこの「クリスティーナの世界」。数ある作品の中で「テンペラ画法と細筆によるリアルな風景描写も見事だが、何よりモデルとなった女性の神秘的な孤独感が、辺り一面を夢のような、まさに『クリスティーナの世界』にしている点で間違いなく彼のベストだろう」(井出氏)。なお、挿絵作家だった父の作品と共に展示されているブランディワイン・リバー美術館、通称“ワイエス美術館”が彼の故郷のペンシルベニア州チャズフォードにある。
当時、大スキャンダルを起こした問題作
1913年ニューヨークで開催され、新しい時代を切り開くきっかけを作った「アーモリーショウ」に出展されたフランス人作家マルセル・デュシャンの伝説的作品。「彼は第1次世界大戦の戦火を避けて米国に移住してきたが、以降は20世紀美術界の巨人として、常に話題を提供し続けた」(金沢氏)。彼は「機械そのものの美学を持ち込み、衝撃を与えた作家たちの中で最も先鋭的で、この作品も米国の20世紀初頭の美学に大きな影響を与えた」(清水氏)として高い評価を受けている。その意味で単なる美術家としてだけではなく、美術上の思想家とみなされている。
寡作画家の多数の作品が米国に
日本人のみならず人気が高いフェルメールだが、作品が三十数点しか確認されていない中で米国にはメトロポリタン美術館にある5点を含め、作品の三分の一が米国にある。「ボストンのイサベル・ガードナー美術館が所蔵していた『合奏図』が全米最高とも言われるが、残念ながら盗まれたまま。それでも本作品は傑作の一つに変わりがない」(井出氏)。また、「彼の作品はどれも静謐(せいひつ)な美で満たされているが、これはオランダの室内画の伝統を感じさせながら、彼の世界を具現している」(後藤氏)。METから近いフリック・コレクションに三点の作品があるのも、ファンには好都合。
最晩年に残した大作、キュビスムを予感
セザンヌが晩年に描いた「大水浴」はバーンズ財団が所有するものも含め世界で3枚あるが、これが最も大きく完成度も最も高いとされる作品。「裸婦が背景に溶け込むように描かれた本作は、後のキュビスムを予感させる重要な作品。カンヴァスの地が見えているため未完成ともいわれるが、絵の具が置かれていなくとも、それが全体の調子に繋がっている」(後藤氏)。
フォーヴィスムの旗手として大きな影響力
「生きる喜び」に描かれたそれぞれの人物の大胆な色遣いや遠近法を無視したデフォルメはそれまでの伝統的な絵画表現からは逸脱しているが背景と溶け合っているという点や、省略できるものをすべて捨て去るといった簡略化にも成功したという点で、マティスの転機になった作品である。「20世紀は科学技術の時代であるが、一方で人間は自然との関係を忘れてはいけないことをマティスは世紀の初めから指摘しており、それがこの絵画の持つ重要性と言える」(清水氏)。
11位のウォーホルの「キャンベルスープ缶」はアートの価値観を変え、ポップアートの旗手として世間に知らしめた記念碑的作品。
12位の「眠れるジプシー」は写実と幻想が交錯し、素朴だが独創性あふれるルソーらしい作品で人気が高い絵でもある。「この絵を見ると元気がでるというアーティストが多い。彼はユーモアとイマジネーション、芸術的な感性を持った絵を描いた。20世紀においてルソーの絵は西洋の伝統を受け継がないことが、謎めいた魅力を生む素晴らしい実例である」(長沢氏)。
13位の「メロードの祭壇画」は「油彩最初期の歴史的な作品としての価値も高く、室内の調度品などの写実的な描写も当時の庶民生活が読み取れてとても興味深い」(佐々木氏)作品。
14位のジャスパー・ジョーンズの「旗」は平面である絵画から感情や物語性を排除し、アメリカ国旗を描いた彼の代表作。
15位のレンブラントの「フローラ」は「愛妻を古代ローマの花の女神に見立て、暗闇から浮かび上がる人物造形に光の画家の面目がある。とっつきにくい面があるレンブラントの作品の中で親しみやすい」(宝玉氏)のはやさしさがにじみ出た横顔がもたらすものだろう。
16位のゴーギャンの作品は自殺を図る直前に描かれた集大成と言われる大作。彼の人生が収斂されているという意味で代表的かつ記念碑的な作品である。
17位のダ・ヴィンチが描いた最初の肖像画である「ジネブラ・デ・ベンチの肖像」は「ごく限られたダ・ヴィンチの作品が米国にあることが奇跡に近く、初期の若さがあふれている表現に注目したい」(佐々木氏)。また、「やや堅苦しい表情ではあるが、彼にしか描くことができない神秘的な存在感がある」(井出氏)。
18位の「ナイアガラ」はハドソンリヴァー派の代表的な画家であるフレデリック・チャーチが米国的写実主義で雄大な自然を描いた代表作だ。
19位のクリムトの「アデーレ・ブロッホ=バウワーの肖像」は金銀の装飾で人物を覆った華やかさあふれる肖像画だが、現在の所有者に渡るまで、数奇な運命を辿ったことでも知られる作品。
20位の「舟遊びをする人たちの昼食」は数あるルノアール作品の中でも、上流階級のセーヌ湖畔のレストランでの様子を描いた初期の代表作。
戦後、アメリカ抽象表現主義が主流に
20位までには入らなかったが、サージェント、イーキンス、カサット、ホイッスラー、オキーフなどのアメリカ人画家たちや、戦後、主流となった抽象表現主義を中心とした画家の中でロシア生まれのマーク・ロスコ、バーネット・ニューマン、デ・クーニング、ラウシェンバーグなど巨匠たちの作品も一度は目にしておきたい。絵画の概念を覆すような巨大で単一な色を配したニューマンの代表作「偉大にして崇高なる人」は「抽象表現主義ニューヨーク派の中で最も簡素化され反イメージの作品で、この反イメージをイメージとしている」(中里氏)大作である。
米国に埋もれている日本美術
また、重要文化財や国宝級の日本美術品がアメリカの個人や美術館にあることはよく知られており、競って日本美術の作品をコレクションしていた時代があった。昨年、首都ワシントンのサックラー美術館で開催された北斎展は10万を超える入場者を記録し、あらためてアメリカにおける北斎の人気が高いことが証明された。
クリスティーズの山口桂氏によると、日本美術に関してはボストン美術館とメトロポリタン美術館が双璧。貴重な肉筆の浮世絵を所蔵しており見所は多い。ただし、展示スペースが限られており、何が展示されているか実際に行ってみないと分からないのが難点。メアリーバーク婦人、ジョン・パワーズ氏、プライス氏、ギッター氏など個人のコレクションも素晴らしいものが多い。一般公開していないケースが多いが、バークコレクションは予約制で公開している。
昨年、ワシントンの北斎展でも晩年の肉筆画が数点展示された。フリーア氏の遺言により、常設で展示もされない貴重な絵が一般公開されたが、このように埋もれた名画を目にする機会に恵まれるかも知れない。その他、現代でも高い人気がある俵屋宗達の「松島図屏風」(フリーア美術館蔵)、日本から海外に流出した美術品の中でも最高作品の一つに数えられ、合戦絵巻の白眉と言われている「平治物語絵巻・三条殿夜討巻」(ボストン美術館蔵)など見逃せない作品がある。
米国の美術館では日本の美術館の特別展で見るのとは違い、待ち時間もほとんどなく世界的な名画でも絵筆の細かいタッチや勢い、丹念に描き込まれた細部が見て取れる距離まで近づくことが出来るのが普通だ。また、貸し出さないことを遺贈の条件としたため、日本ではおろか、他の美術館でも見ることが出来ない絵も多い。主要都市の美術館は街中の便利な場所に位置しているものが多く、日本に帰国後に「見ておけば良かった」と後悔する前に、少しの機会を見つけて名画に接してみてはいかがだろうか。
<選考の方法>
選考委員8人に米国で所蔵される絵画の中から20点を選び順位付けしてもらった上で、これを点数化しランキングを作成した。選考委員は次の通り(敬称略)井出洋一郎(美術評論家・東京純心女子大学教授)▽金沢毅(美術評論家・成安造形大学名誉教授)▽清水敏男(美術評論家)▽宝玉正彦(日本経済新聞社編集局文化部編集委員)=以上日本在住▽後藤トキ子(美術史家・美術エッセイスト)▽佐々木健二郎(アートジャーナリスト・画家)▽中里斉(現代画家・元ペンシルバニア大学美術大学院教授)▽長沢泰子(フリージャーナリスト・美術史家)=以上米国在住
掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。 著作権は日本経済新聞社/日経アメリカ社またはその情報提供者に帰属します。